「運送業を始めたいけれど、営業所は賃貸でも大丈夫?」
「借りている事務所をそのまま運送業の営業所にできる?」
「物件を契約してから運送業許可が取れないと分かったらどうしよう……」
これから運送業を開業する方の中には、このような疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、賃貸物件でも、必要な条件を満たせば一般貨物自動車運送事業の営業所として使用できます。
ただし、賃貸事務所であれば、どのような物件でも認められるわけではありません。
賃貸借契約の内容や使用権原、都市計画法・建築基準法などの関係法令への適合、営業所としての規模などを確認する必要があります。
この記事では、賃貸物件を運送業の営業所にするための条件や、契約前に確認しておきたいポイントを詳しく解説します。
賃貸物件でも運送業許可の営業所にできる?
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、事業を運営する営業所が必要です。
営業所は、必ずしも自社所有の建物である必要はありません。
賃貸事務所や貸店舗などであっても、運送業の営業所として必要な条件を満たしていれば、使用することが可能です。
ただし、一般的な事務所として賃借できることと、運送業の営業所として使用できることは同じではありません。
物件の所在地、建物の用途、契約内容などを確認したうえで判断する必要があります。
賃貸物件を営業所にするための主な条件
1.営業所として使用する権利があること
まず重要なのが、営業所として物件を使用する権利(使用権原)を確保していることです。
賃貸物件の場合、一般的には賃貸借契約書などによって使用権原を確認します。
その際には、次のような点を確認しておくことが重要です。
- 申請者が物件を使用できる契約になっているか
- 契約書の所在地や物件の表示が正しいか
- 運送業の営業所として使用することが認められているか
- 契約期間や更新条件が審査基準に適合しているか
- 転貸物件の場合、必要な承諾や使用権限が確保されているか
一般貨物自動車運送事業の許可審査では、一定期間継続して営業所を使用できることが求められます。
契約期間についても審査基準や細部取扱いに定めがあるため、契約期間が短い場合には、自動更新条項の有無などを確認する必要があります。
また、契約書の使用目的が運送業の営業所としての利用に対応しているかも重要です。
2.都市計画法や建築基準法に抵触しないこと
賃貸物件を営業所にする場合、関係法令に抵触しないことも重要な条件です。
例えば、次のような事項を確認する必要があります。
- 用途地域による建物用途の制限
- 市街化調整区域における利用制限
- 建築基準法上の建物の用途
- 用途変更に伴う手続きの必要性
- 消防法など関係法令への適合
特に、市街化調整区域にある物件では、既存の建物であっても、運送業の営業所として使用することに制限がある場合があります。
また、不動産広告に「事務所利用可」と書かれていても、関係法令上、予定している運送事業の営業所として利用できるとは限りません。
物件の契約前に、所在地の自治体などで確認することをおすすめします。
3.営業所として適切な規模があること
営業所には、事業計画を適切に遂行できる規模が求められます。
例えば、運行管理や事務作業を行うためのスペース、必要な備品、書類の保管場所などを確保できるかが重要です。
単に住所を借りているだけで、実際の事業運営を行う施設として利用できない場合には、営業所としての適格性に問題が生じる可能性があります。
営業所として必要な設備や使用状況についても、事業計画に応じた確認が必要です。
賃貸借契約書では何を確認する?
契約名義を確認する
法人として運送業許可を申請する場合、申請者は法人となります。
一方、賃貸借契約の名義が代表者個人になっている場合などには、法人がその物件を営業所として使用できる権利を有しているか確認が必要です。
契約名義と申請者が異なる場合には、契約内容の変更や貸主の承諾などが必要になることがあります。
使用目的を確認する
賃貸借契約書には、物件の使用目的が定められていることがあります。
例えば「居住用」とされている物件を、貸主に無断で運送業の営業所として使用することは避けなければなりません。
また、「事務所」と記載されていても、契約内容によっては利用方法に制限が設けられている場合があります。
契約前に、運送業の営業所として使用する予定であることを貸主や管理会社に説明し、必要な承諾を得ておくことが大切です。
契約期間と更新条件を確認する
運送業は継続的に行う事業であるため、営業所についても継続して使用できることが重要です。
そのため、賃貸借契約の期間や更新条件について、許可審査上の使用権原の要件を満たしているか確認する必要があります。
特に、短期間の契約や定期建物賃貸借契約などの場合には注意が必要です。
契約期間だけでなく、更新の仕組みや契約終了時の取扱いについても確認しましょう。
レンタルオフィスやバーチャルオフィスでも営業所にできる?
開業費用を抑えるため、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを検討する方もいらっしゃると思います。
ただし、運送業の営業所は、単に住所を登録するための場所ではありません。
実際に運行管理や事業運営を行うための施設として、必要な規模や機能を備えていることが求められます。
そのため、住所の利用や郵便物の受取りだけを目的とするバーチャルオフィスでは、営業所の要件を満たすことは困難と考えられます。
一方、専用スペースを確保できるレンタルオフィスについては、使用権原や施設の規模、関係法令などの条件を個別に確認する必要があります。
「レンタルオフィスだから必ず不可」「事務所を借りているから必ず可能」と一律に判断することはできません。
賃貸物件の営業所と車庫は別の場所でもよい?
運送業では、営業所に加えて事業用自動車を保管する車庫が必要です。
営業所と車庫は原則として併設が求められますが、一定の条件を満たす場合には別の場所に設置できることがあります。
その場合、営業所と車庫の距離や位置関係、管理体制などが審査基準に適合している必要があります。
また、車庫についても使用権原や関係法令への適合、車両の収容能力などを確認しなければなりません。
営業所だけを先に契約してしまうと、条件に合う車庫が見つからず、開業計画に支障が生じる可能性があります。
そのため、営業所と車庫はできるだけ一体的に検討することが重要です。
物件契約前に確認したい7つのポイント
賃貸物件を運送業の営業所として検討している場合には、次の点を確認しておきましょう。
- 営業所として使用できる契約内容になっているか
- 申請者が使用権原を確保できるか
- 契約期間や更新条件に問題がないか
- 用途地域や建物用途に問題がないか
- 運行管理や事務作業に必要なスペースがあるか
- 車庫との位置関係が許可要件を満たしているか
- 必要な図面や契約関係書類を準備できるか
これらは主な確認事項であり、実際には物件の状況や事業計画によって確認すべき内容が異なります。
物件を契約してから許可が取れないとどうなる?
賃貸物件を契約した後に、運送業の営業所として使用できないことが判明すると、別の物件を探す必要が生じる可能性があります。
その場合、既に支払った賃料や初期費用が無駄になったり、開業予定が遅れたりすることも考えられます。
特に、運送業では営業所だけでなく、車庫や休憩・睡眠施設なども確保する必要があります。
複数の施設を準備するため、物件選びの段階から許可要件を確認しておくことが重要です。
契約前に行政書士へ相談し、必要に応じて関係行政機関に確認することで、物件選定に伴うリスクを減らせる場合があります。
まとめ|賃貸物件は契約前に運送業の営業所要件を確認
一般貨物自動車運送事業の営業所は、賃貸物件でも設置することができます。
ただし、賃貸借契約の内容や使用権原、関係法令への適合、営業所としての規模など、必要な条件を満たしていることが前提です。
特に、不動産広告に「事務所利用可」と記載されていても、運送業許可の営業所として使用できるとは限らない点に注意が必要です。
物件を契約してから問題が判明すると、開業スケジュールや資金計画に影響する可能性があります。
東京・神奈川で運送業の開業を検討されている方は、賃貸物件の選定段階からお気軽にご相談ください。

