「運送業を始めるために、営業所と車庫を確保しました。これで許可申請はできますか?」
「運転者のための休憩室も用意しなければならないのでしょうか?」
これから一般貨物自動車運送事業を始める方の中には、このような疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、運送業許可では、営業所や車庫だけでなく、乗務員が利用する休憩・睡眠施設についても要件を満たす必要があります。
ただし、休憩施設と睡眠施設は同じものではありません。睡眠を必要とする運行があるかどうかによって、求められる設備や広さも変わります。
この記事では、運送業許可における休憩・睡眠施設の必要性や設置場所、広さ、物件契約前に確認したいポイントを解説します。
運送業許可には休憩施設が必要ですか?
一般貨物自動車運送事業では、運転者などの乗務員が適切に休憩できる施設を確保する必要があります。
貨物自動車運送事業輸送安全規則では、事業者に対して、乗務員等が有効に利用できる休憩施設を整備することを求めています。
また、乗務員に睡眠を与える必要がある場合には、睡眠施設の整備も必要です。
つまり、営業所と車庫を確保しただけで、施設に関する許可要件をすべて満たしたことにはなりません。
事業計画を作成する段階で、休憩・睡眠施設についても確認することが重要です。
休憩施設と睡眠施設の違い
休憩施設とは?
休憩施設は、運転者などの乗務員が休憩するための施設です。
運転者が実際に利用できる場所であることが重要であり、単に図面上で「休憩室」と記載すればよいわけではありません。
例えば、営業所内の一部を休憩スペースとして使用する場合でも、休憩に必要な設備や利用環境を整える必要があります。
事務机や書類で埋まっている部屋など、実際には休憩に使用できない状態では問題となる可能性があります。
睡眠施設とは?
睡眠施設は、運行計画などにより、乗務員に睡眠を与える必要がある場合に整備する施設です。
例えば、夜間運行や長距離運行などを行う場合には、運行の実態に応じて睡眠施設が必要になることがあります。
一方で、すべての運送会社が同じ規模の睡眠施設を設けなければならないわけではありません。
実際の運行計画を踏まえて、睡眠施設の必要性や収容人数を検討することが重要です。
休憩・睡眠施設の主な許可要件
1.乗務員が適切に利用できる施設であること
関東運輸局の許可申請処理方針では、休憩・睡眠施設について、乗務員が有効に利用できる適切な施設であることが求められています。
休憩室という名称を付けるだけではなく、実際に休憩や睡眠に使用できる環境を整える必要があります。
机や椅子、休憩に必要な備品、睡眠施設が必要な場合には寝具など、施設の用途に応じた設備を検討しましょう。
申請に際しては、施設の図面や、必要な備品等を確認できる写真などの準備も重要です。
2.睡眠施設には必要な広さがあること
睡眠施設については、関東運輸局の許可申請処理方針で、睡眠を与える必要がある乗務員1人当たり2.5平方メートル以上の広さを確保することが求められています。
例えば、同時に2人の乗務員が睡眠を取る計画であれば、基準上は少なくとも5平方メートルの広さが必要となります。
ただし、実際の施設では、寝具の配置や出入りのしやすさなども考慮する必要があります。
なお、2.5平方メートルという基準は睡眠施設についてのものであり、すべての休憩スペースに一律に適用されるものではありません。
3.原則として営業所または車庫に併設すること
休憩・睡眠施設は、原則として営業所または車庫に併設する必要があります。
そのため、営業所を探す際には、休憩スペースを確保できるかどうかも確認しておくことが大切です。
営業所と車庫が別の場所にある場合や、休憩・睡眠施設を別の場所に設ける場合には、関東運輸局の定める位置関係などの基準を確認する必要があります。
単に近隣の建物を借りればよいとは限らないため、施設の配置は事前に検討しましょう。
4.施設を使用する権利があること
休憩・睡眠施設についても、申請者が使用する権利(使用権原)を有していることが必要です。
賃貸物件の場合には、賃貸借契約書などで使用権原を確認することになります。
特に、法人として運送業許可を申請する場合には、法人が施設を使用できる契約内容になっているか確認しましょう。
また、契約期間や更新条件、休憩・睡眠施設として使用することについて貸主の承諾が必要かどうかも、契約前に確認したいポイントです。
5.関係法令に抵触しないこと
休憩・睡眠施設は、都市計画法、建築基準法、農地法などの関係法令に抵触しないものである必要があります。
例えば、倉庫や車庫の一部を休憩室として利用する場合には、建物の用途や使用方法について確認が必要になることがあります。
既存の建物であっても、運送業の休憩・睡眠施設として使用できるかどうかは個別に判断する必要があります。
営業所の一部を休憩室として使用できますか?
営業所の一部を休憩スペースとして使用することは、施設の状況や使用方法によって可能です。
必ずしも休憩専用の建物を別に用意しなければならないわけではありません。
ただし、営業所としての業務に必要なスペースと、乗務員が休憩するためのスペースを適切に確保する必要があります。
例えば、事務机を置いただけの小さな部屋で、乗務員が休憩する場所を確保できない場合には、施設の見直しが必要になることがあります。
物件を契約する前に、営業所と休憩施設の両方の用途に対応できるか検討しておきましょう。
長距離運送をしない場合、睡眠施設は不要ですか?
日帰り運行を中心とする事業計画の場合、営業所などで乗務員に睡眠を与える必要がないことも考えられます。
ただし、長距離運送を行わないという理由だけで、睡眠施設が必ず不要になるわけではありません。
運行時間、勤務形態、休息の取り方などによって判断が異なります。
休憩施設は必要であることを前提に、睡眠施設については実際の運行計画に応じて検討することが重要です。
休憩・睡眠施設を確保する際のチェックリスト
運送業の開業に向けて営業所などの物件を探す際には、次の項目を確認しておきましょう。
- 乗務員が実際に利用できる休憩スペースがあるか
- 休憩に必要な備品や設備を整えられるか
- 運行計画上、睡眠施設が必要か
- 睡眠施設が必要な場合、必要な面積を確保できるか
- 営業所または車庫との位置関係に問題がないか
- 申請者が施設の使用権原を確保できるか
- 建築基準法や都市計画法などに抵触しないか
- 申請に必要な図面や写真などを準備できるか
これらは主な確認事項です。実際の許可申請では、施設の所在地や事業計画に応じて、最新の審査基準を確認する必要があります。
休憩施設を確認せずに物件を契約するとどうなる?
運送業の開業準備では、営業所の立地や賃料、車庫の広さに目が向きがちです。
しかし、営業所としては利用できても、休憩・睡眠施設の要件を満たせない場合があります。
その場合、間取りの変更や別の施設の確保が必要となり、開業計画に影響する可能性があります。
特に賃貸物件では、契約後に用途や間取りを変更することが難しい場合もあります。
営業所を契約する前に、休憩・睡眠施設としての利用まで含めて確認しておくことが大切です。
まとめ|営業所・車庫だけでなく休憩施設も確認しましょう
一般貨物自動車運送事業の許可では、営業所や車庫に加えて、乗務員が利用する休憩・睡眠施設についても要件を満たす必要があります。
休憩施設は必要ですが、睡眠施設の必要性や規模については、運行計画に応じた検討が重要です。
また、施設の広さだけでなく、設置場所、使用権原、関係法令への適合なども確認する必要があります。
東京・神奈川で運送業の開業を検討されている方は、営業所や車庫を契約する前に、休憩・睡眠施設についても確認しておきましょう。

